光ファイバの信頼性を强化する先进的物性予测モデルの开発

「光ファイバ被覆の硬化物性予测」
光通信研究所
渡辺 祐大
情报通信を支える光ファイバ、日常の中でその存在を意識することはほとんどないかもしれません。しかし、安定した通信を実現するために、光ファイバには先進的な技術が結集されています。中でも、繊細なガラスファイバを物理的なダメージから守る盾となるのが、保護被覆です。被覆は、一般に紫外線によって硬化する特殊な樹脂で作られており、その硬化物性が光ファイバの信頼性を大きく左右します。しかし、硬化物性は紫外線の照射条件によって大きく変わることが知られており、安定した品質を確保するには最適な照射条件の特定が不可欠です。そこで私たちは、経済的かつ効率的に最適な照射条件を確立するため、任意の照射条件下で被覆の硬化物性を高精度で予測できるモデルを開発しました。この技術により、光ファイバの信頼性を高め、通信インフラのさらなる安定化に貢献できると考えています。
光ファイバの信頼性向上に向けた新モデルの开発
近年、生成础滨の発展やビッグデータの普及により、データセンタで使用される光ファイバの需要が急増しています。光ファイバの敷设には大掛かりな作业と多额の费用が必要とされるため、一度敷设された光ファイバは10年以上にわたり安定した通信を提供する信頼性が求められます。この信頼性を确保する键となるのが、保护被覆の硬化物性です。
紫外线による硬化反応は、古くから用いられている基本的な化学反応ですが、多くの成分が関与する复雑な机构であるため、最适な照射条件の特定には多大な时间と费用がかかっていました。データトラフィックの急速な増加と通信の大容量化に対応する新しい製品をすばやく市场に投入していくことが求められる中で、信頼性の高い光ファイバを効率的に製造できるプロセスの设计は急务だと考えました。そこで私たちチームは、照射によって得られる被覆の硬化物性を正确に予测する新たな方法を自分たちの手で开発することを决意しました。
紫外线硬化反応の谜を解明
课题は、紫外线による硬化反応の复雑さをどのように扱うかでした。硬化反応では、特殊な化学物质(光开始剤)が紫外线によって活性化され、他の化学物质(モノマー)と连锁的に架桥反応を起こして硬い高分子(ポリマー)を形成します(下図)。そのポリマーの架桥状态が硬化物性を大きく左右します。详细な调査と分析の结果、私たちは光开始剤の反応率と照射强度の间に明确な相関関係があることを见出しました。そしてこの発见により、计算モデルに照射条件のパラメータを组み込むことで、任意の照射条件下での光开始剤の反応率を92%という非常に高い精度で予测できる実用モデルの开発に成功しました。このモデルの活用により、开発者の试行错误に頼ることなく、硬化条件を理论的に最适化し、プロセス设计を合理的かつ経済的に行うことが可能になったのです。
紫外线硬化反応の模式図
情报社会を支える製品开発への使命と挑戦
研究开発の過程では、実際に起こり得る現象を想定し、仮説を立て、それを検証することを繰り返します。自分の仮説や予測モデルが実際の現象を正確に説明し、新たな発見につながる瞬間は、大きな達成感と充実感を覚えます。こうして得られた知見やアイデアが製品開発に役立った時には、エンジニアとしての大きなやりがいを感じます。
データ活用やデジタルトランスフォーメーション(顿齿)推进の波に乗り、これまで経験や勘に頼っていたプロセス设计を数値化して再现し、制御技术や製造プロセスの改良を加速させていきたいと考えています。光通信の世界では、细径光ファイバや空间多重伝送技术など、伝送容量の増大が求められています。当社は、世界初となる极低损失マルチコア光ファイバの量产化に成功するなど、世界をリードする革新的な製品开発を通じて、豊かな情报社会の基盘を支えています。これからも、社会に価値をもたらす製品开発に携わるエンジニアの一人として、日々の努力を重ねていきたいと考えています。
関连情报
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