
電力安定供給のための系統側蓄电池~北海道電力ネットワーク?南早来変電所~
系統側蓄电池導入の意味
北海道勇払郡安平町――ここにある北海道電力ネットワーク南早来変電所にて、系統側蓄电池(レドックスフロー電池)の運用が、2022年4月から開始された。約150m×45m の広大なフィールドにおよそ40基のレドックスフロー電池設備が立ち並ぶ姿は壮観だ。容量は1.7万kW×3時間:5.1万kWh。世界最大規模のレドックスフロー電池施設だ。
北海道エリアの接続可能量が限界に達して以降、風力発電や太陽光発電の出力変動は、発電事業者自らが緩和する方法で個別に行い、多くの事業者は蓄电池を併設してきたが、今回設置された蓄电池は、送配電事業者が電力系統側へ設置したものである。電力系統側に大型の蓄电池を設置することにより、発電事業者側で個別に蓄电池を併設する必要がなくなり、系統全体の電池台数が少なくて済むため、経済合理性が高い。さらに、出力変動緩和を発電事業者側が行う必要がなくなるので、運用管理の負担が減るといった具合に発電事業者のメリットは大きい。

そもそも北海道の系統規模は他の電力会社に比べて小容量であり、再生可能エネルギーの導入拡大にあたっては、従前は調整力の限界という問題があった。そのため、北海道電力ネットワークでは、再生可能エネルギーの接続に対しては段階的にその接続可能量の拡大を行ってきた。今回の系統側蓄电池の導入は、その課題解決の有効な手段といえる。電力系統の計画業務を担当し、蓄电池導入プロジェクトに携わった北海道電力ネットワークの中本涼介氏は、この経緯について次のように語る。

「風力発電をはじめとする再生可能エネルギーという大きなポテンシャルを北海道は有しています。そのため、当社は段階的に再生可能エネルギーの導入拡大に向けて取り組んできました。それでも調整力は限界に達してきていた状況だったので、風力発電事業者様に出力変動緩和の要件を定めさせてもらいました。つまり、個別サイト側に蓄电池を設置し、出力変動平滑化を行ってもらうというものです。しかし、風力発電事業者様の増加とともに、集中的に系統側で蓄电池を運用した方が効率的ではないかと国の審議会でも答申があり、共同負担という形で蓄电池を設置すべく、風力発電事業者様を募集し、今回の大型蓄电池導入を決定しました」(中本氏)
こうして、北海道電力ネットワークが声を掛け、風力発電事業者が共同で参画する系統側蓄电池導入のプロジェクトが始まった。

コロナ祸、极寒、悪天候の中で进められた建设工事

住友電工は2015年より、北海道電力と共同で、南早来変電所において、3年間にわたってレドックスフロー電池の大規模実証試験を行っている。その時から技術責任者として関わってきたのが、RF電池技術部 第一蓄電技術グループ長の林修司である。
「レドックスフロー電池の性能評価を行うとともに、再生可能エネルギーの電力変動によって系統に生じる影響を緩和し、かつ効率や寿命の最大化を実現する系統側蓄电池の最適な制御?運転技術の確立に取り組み、安定?安全の運転を実現しました。そして2019年、北海道電力は系統側蓄电池の導入?運用を決定し調達に向けた公募を開始。私たちは、入札に臨みました」(林)

実証実験を共同で行ったとはいえ、住友电工にアドバンテージがあったわけではない。「高い公平性?透明性」の下に入札は行われた。北海道支店长の桥本诚が当时を振り返る。
「一番の问题は、レドックスフロー电池のコスト。ただ価格面は厳しいと感じていたものの、それまでの北海道电力とのコミュニケーションを通じて、技术力に一定の评価?信頼は得られているという手応えはありました。だから落札したときは、安堵感が大きかったですね。同时に、実运用に向けてここからスタートする、という気の引き缔まる思いでした」(桥本)
こうして2020年7月、レドックスフロー电池设备は着工した。林は引き続きプロジェクトマネージャーとして现场をマネジメントした。すべての工程において时间、费用の无駄を省いた。だがコロナ祸が大きな壁として立ちふさがった。そんな中、现场代理人として建设に临んだのが、第一蓄电技术グループの叁谷一豊である。

「コロナ祸で、港湾机能が停止となり、コンテナなどモノが入ってこなくなり、人员も制限されました。着工当初から工程は遅延、竣工予定の2022年3月はどんどん迫ってくる。不安を抱えつつ现场と向き合いました。さらに冬季に入ると、现场は极寒となります。早朝から作业を开始しましたが、気温はマイナス25℃。観测史上最大积雪、台风并みの暴风雨と悪天候にも悩まされました。工程の遅れを取り戻す闘いが続きました」(叁谷)
北海道?再生可能エネルギーのポテンシャル向上のために
建設工事がほぼ完了したのが2021年11月。それから引き渡しまで試験が実施された。担当したのが第三蓄電技術グループの福元翔平である。福元は大学でも蓄电池を研究対象とし、入社以来、主にモロッコや台湾、ベルギーなど海外で展開されたレドックスフロー電池に関わってきた。試験過程では、PCS(PowerConditioning System)に関する問題が発生した。

「笔颁厂は、直流の电気を交流に変换し、家庭用の电気机器などに利用できるようにするための装置です。発电电力を系统电力に変换する役割を担っており、レドックスフロー电池设备の中で极めて重要な装置。しかし、トラブルが発生し安定しない事态に陥りました。外国製を採用したため、技术者に来日して调整してもらう必要がありましたが、コロナ祸で不可。リモートでコミュニケーションを取り、问题をクリアしたことが强く印象に残っています」(福元)
福元をはじめ多くのメンバーの力を結集した結果、計画通り、2022年3月31日に竣工。三谷は納期に間に合ったことが「奇跡」のように思えた。プロジェクトマネージャーの林は、蓄电池設備が系統連系された瞬間「目頭が熱くなった」と言う。「住友電工の総合力を発揮したプロジェクト」(林)だった。こうして、レドックスフロー電池設備は北海道電力ネットワークに引き渡された。前出の中本氏は「コロナ禍の中で予定通りプロジェクトを完遂させたことに、住友電工の底力を感じた」と感謝の気持ちをにじませた。
このプロジェクトは、北海道電力ネットワークが系統側蓄電地を設置し、係る費用は風力発電事業者の共同負担となる(約9割)。北海道電力ネットワークは、はじめに「系統側蓄电池による風力発電募集プロセス(Ⅰ期)」を実施。この募集で優先系統連系事業者15件、16.2万kWが決定した。今後の展開について中本氏は次のように語る。
「系統への影響を確認しながら段階的に風力発電の導入量を拡大していくため、Ⅰ期とⅡ期に分けて募集を行い、Ⅰ期募集としては技術的に確実性が見込める規模として募集容量を60万kWとしました。したがって残容量が43.8万kWあり、現在追加の募集プロセスが進行中です。今後さらに蓄电池の導入を進め、北海道が持つ再生可能エネルギーのポテンシャルを最大限に引き出していきたいと思っています」(中本氏)
北海道エリアにおけるレドックスフロー电池のプレゼンス确立を目指した、住友电工の挑戦ははじまっている。
2015年に北海道电力株式会社と共同で実施した
レドックスフロー电池の大规模実証试験施设


