北田 秀樹

あきらめず、粘り強く「空気ばね」に込めた技術者魂

新干线の进化を支える空気ばね

「机械屋としてものづくりの基盘を支えたい」大学时代に机械工学を専攻していた私は、この想いを胸に住友电工に入社し、以来「空気ばね」の开発に注力してきました。空気ばねとは强靱な繊维で补强されたゴムと金属部品からなり、空気の圧缩性などを利用し、振动を抑えるサスペンションのことです。たとえば鉄道车両に採用されている空気ばねは、车轮から车体に伝わる振动を大幅に軽减し、乗り心地向上を実现する重要な保安部品です。

1980年代当时、新干线の高速化は航空机との旅客获得竞争に打ち胜つためだけではなく、経済活动が活発化する社会からの要请でもありました。その実现のために求められたのが车両の軽量化。空気ばねが组み込まれている台车部においても「ボルスタ(揺れ枕)」という重量のある部品の廃止が课题でした。ボルスタは、カーブ走行时に车体と台车间で生じる旋回运动を受け持つ机能を有しています。私たちは新しい构造の开発に取り组み、空気ばねにこの机能を持たせることでボルスタを廃止した「ボルスタレス式台车」を実现しました(図1)。さらに空気ばねの金属部品の材质にアルミ合金を多用し軽量化に寄与、また走行条件に応じてばね特性を最适化する设计により安定した乗り心地も実现しました。以降、新干线车両はすべてボルスタレス式台车が採用されています。

図1 改良前:ダイレクトマウント式台車 改良後:ボルスタレス式台車
図1 改良前:ダイレクトマウント式台車 改良後:ボルスタレス式台車

业界スタンダードとなる空気ばねを开発

図2 カーブ通過時の車体の様子

1993年、空気ばねに新たな技术开発が要请されます。新干线の一层の速度向上に伴い、课题とされたのがカーブ通过时の速度と乗り心地の向上でした。日本は平野部が少ないため、轨道にカーブが多いのが特徴です。カーブを曲がる际にはカント(左右のレールの高低差)を设けて、车体を内侧に倾けることで、远心力により车体が外侧に倒れようとする力を打ち消すように设计されています。その设定を超える速度で通过しようとすると、远心力が大きくなり车体が外侧に飞び出そうとします。これを防ぐために车体と台车の间に取り付けられている装置が「ストッパ」です。しかし、ストッパに当たると、乗り心地は着しく低下します(図2)。カーブ通过时にストッパに当たることを回避することが求められました。

私たちが取り組んだのは、遠心力相当の力を空気ばねで保持することでした。何度もお客様の下に出向き、技術提案を行いましたが、なかなか採用には至りません。お客様と共に考え、試行錯誤を繰り返し、地道な工夫を積み上げました。苦難の連続ではありましたが、決してあきらめず、粘り強く取り組んだ結果、 設定速度を超える遠心力にも対応できる空気ばねの開発に成功しました。これにより高速でカーブを通過しても、ストッパ当たりがない快適性を実現したのです。開発から導入までに丸5年の年月を費やしましたが、大きな達成感を味わった技術者冥利に尽きる経験でした。

この技术はいまや新干线用空気ばねのスタンダードとなりました。その后、空気ばねの特性を活かした车体倾斜システムの开発によって、カーブ通过时の一层の速度向上を実现しています。またその后の新型车両开発时にも、走行の安全性确保や快适性向上にむけた空気ばねの改善を地道に行っています。

エポックメイキングだった出来事が中国市场への进出です。2010年に赴任して现地スタッフと2名で何もない所から工场を立ち上げ、中国高速鉄道への採用?现地生产を轨道に乗せることができました。帰任后に、事业部の主力製品に成长するまでの飞跃的な売り上げを记録、中国高速鉄道の约半数には当社の製品が採用されています。

受け継がれる住友电工の技术者の顿狈础

周囲のサポートを受けつつ、自らの手で当社の空気ばねをここまで育てられたことには、感慨深いものがあります。しかし、あらためて振り返りますと、その过程は决して华やかではありません。そもそも空気ばねは约半世纪の歴史を持ち、改善?改良を重ねて现在に至っています。私自身のこれまでの道程も、构造设计に小さな工夫を积み重ねた地道な改善?改良の歴史でした。「机械屋としてものづくりの基盘を支えたい」という私の想いの结実が、まさに高速鉄道车両を支えている空気ばねなのだと思います。

现在、空気ばねは时代や社会のニーズに合わせ、さらなる进化を続けています。制御技术も取り入れたシステム化が进み、走行速度の向上?信頼性の确保?环境への适合性?快适性の向上など、新たな课题に対する対応が求められています。

今までの経験と知见を基に、私は后进の指导?育成にも取り组んでいます。先辈たちから受け継いだノウハウや技术を后辈たちに繋いでいくと共に、自らも、ものづくりにおける不変のテーマを彻底して追求していきたいと考えています。ものづくりは、常に最适最善を目指していくプロセスそのものであり、その取り组みに终わりはありません。あきらめず粘り强く、彻底してものづくりにこだわること。そのスタンスこそが技术者としての私の流仪であり、住友电工に継承されている顿狈础だと确信しています。

PROFILE

北田 秀樹 Hideki Kitada


1980年
住友电気工业(株)入社。ゴムプラスチック(现ハイブリッド製品)事业部

1998年
技術部 制振製品グループ長

2007年
SEIハイブリッド(株) 製造部長

2010年
中国常州住電東海今創特殊橡賿有限公司 総経理

2013年
ハイブリッド製品事業部 技師長

2016年
フェロー※に认定
※住友电工では「高度?希少な技术?技能?ノウハウ?知识等を有する者」をフェローとして毎年数名选出。2017年には8人が认定され、北田は2016年に引き続き认定を受けた。

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