画期的なリサイクルシステムを 実現した新技術~「酸化–湿式化学処理法」への果敢な挑戦~

画期的なリサイクルシステムを 実現した新技術
~「酸化–湿式化学処理法」への果敢な挑戦~

求められたタングステンリサイクル、安定供给への道

超硬工具のリサイクルでは従来、住友电工グループが长年取り组んできた「亜铅処理法」と呼ばれる直接法が用いられてきた。これは固形のハードスクラップを亜铅と一绪に加热し溶融、その后、亜铅のみを取り除くことでスポンジ状となった超硬合金を细かく粉砕し、リサイクル粉末として回収するもの。端的に言えば、构成成分をそのまま粉末に再生する方法だ。亜铅処理法は薬品及びエネルギー消费量が少ない点で优れているが、大きな问题があった。高温処理下で挥発する不纯物は除去できるが、高纯度化はできない。また粉末の粒の大きさも调整できない。そのため、再利用の范囲が限定される。こうした状况の中、住友电工グループは、超硬合金完全リサイクルへの挑戦を开始する。それは、回収したスクラップを鉱石から製錬されたものと同等の原料にすることであり、それが実现できれば、様々な用途に使用でき、タングステンの安定供给の道が开かれるのである。そのために必要とされたのが、亜铅処理法に代わる、新たなタングステンリサイクル技术だった。

使える原料に戻す「高纯度」のリサイクル

新技術に取り組むきっかけとなったのは、2005年のタングステンの価格高騰である。前年比約4倍に価格が上昇し、中国依存のリスクは現実のものとなった。新たなタングステンリサイクル技術の開発は、(独)石油天然ガス?金属鉱物資源機構(JOGMEC)のプロジェクト「希少金属等高効率回収システム開発事業」への参加という形でスタートした。2007年のことである。メンバーは、住友電工、住友電工ハードメタル(株)、(株)アライドマテリアル(以下、アライドマテリアル)、名古屋大学。共同研究で超硬合金スクラップに特化した、小規模でも高効率に処理できる新リサイクル技術を開発する取り組みであり、その中心となったのがアライドマテリアルだった。同社は、タングステン?モリブデンなど高融点金属材料の精製?製造?加工、さらにダイヤモンド精密工具及び精密加工を事業の両輪とする、住友電工グループ产业素材部門の一翼を担う企業。当時、新リサイクル技術開発プロジェクトのメンバーの一人であり、現在はアライドマテリアルの粉末合金事業部技術部長を務める常川稔は、新リサイクル技術の究極の目標は「高純度」のWO3の确保だったと言う。

アライドマテリアル外観
アライドマテリアル外観
酸化–湿式新化学処理栋全景
酸化–湿式新化学処理栋全景
イオン交换栋
イオン交换栋
(株)アライドマテリアル 粉末合金事業部 技術部長 常川 稔
(株)アライドマテリアル 粉末合金事業部 技術部長 常川 稔

「亜铅処理法によるリサイクル粉末は用途が限られており、使用目的も超硬合金の原料に限定されるため、本当の意味でのリサイクルは実现していませんでした。自由に幅広く使える原料に戻すのがリサイクルであり、それは奥颁に加工される前の状态まで戻すこと。それが鉱石精錬と同等の品质の原料、つまり高纯度の奥翱3なのです。また、スクラップの种类を问わず多様なスクラップに対応可能であることも必要でした。それらを実现するのが、スクラップを化学的に分解、溶解して构成成分を回収する『酸化–湿式化学処理法』という新リサイクル技术です。その技术确立には、いくつかの困难な壁がありました」(常川)

高効率を実现した「イオン交换树脂法」

常川が指摘した「困难な壁」の一つが、溶融塩溶解技术の开発だ。奥翱3を得るには、まず、超硬工具スクラップを酸化焙焼し、これを化学的に溶解して溶液とする。しかしこの方法ではスクラップ内部までの酸化が难しく、再酸化の必要から処理コストが高いという问题を有していた。この课题に常川らは切り込んだ。

「私たちが採用した开発手法は、酸化力の强い硝酸ナトリウム(狈补狈翱3)を超硬工具スクラップと共に溶解し、酸化と同时にナトリウムと反応させるという方法です。优れているのはスクラップ内部まで酸化処理することができる点。しかし大きな问题がありました。酸化反応は大量の热を伴う反応であり、急激な発热反応をどう制御し、安全を确保するか。様々な検讨を重ね、溶融塩である狈补狈翱3の供给量の最适化を実现したことで反応制御を可能としました」(常川)

次のフェーズでは、生成したタングステン酸ナトリウム(狈补2WO4)溶液を、タングステン酸アンモニウム((狈贬42WO4)溶液へ変换する必要がある。常川らが目指したのは、高効率な変换である。そこで着目したのが、イオン交换树脂を充填した树脂塔に水溶液を通すことで行う「イオン交换処理」である。狈补2WO4溶液中に含まれるタングステン酸イオンをイオン交换树脂に吸着し、アンモニウム塩によって溶离することで(狈贬42WO4溶液を得るものだ。

「いかにして高効率を実现するか。最适な树脂の选定と共に、今回着目したのは酸性、アルカリ性の强さを表す辫贬値です。辫贬を适切にコントロールすることで、高効率化の道を见出し、従来技术の2~3倍の効率でイオン交换処理が可能となりました。言い换えれば、タングステン吸着量が2~3倍になったとあり、効率化によって设备をコンパクトにできました」(常川)

溶融塩溶解炉
溶融塩溶解炉
焙焼炉
焙焼炉
製造される奥颁粉
製造される奥颁粉

新たな道を探るリサイクル事业の拡大

これら以外にも、排ガスの処理対策、アンモニアの回収?再利用システム、粉状スクラップの适切なリサイクル検讨等々、様々な课题をクリアしてタングステンリサイクルシステムは完成した。プラント设备が稼働したのが2010年、その后ブラッシュアップを重ね、2011年后半、事业が开始された。

「原料であるスクラップから、最终の炭化工程まで、彻底した品质重视の姿势を贯きたいと考えています。今后、リサイクル事业は一层の拡大を进めていきたい。现在の生产拠点である富山製作所は、増产するにはスペースが限られているので、新たな方法を検讨していきます」(常川)


常川が言うリサイクル事业の拡大。その试みは、现在アメリカで进められている。次章では、「酸化–湿式化学処理法」を导入して进められている、アメリカでのリサイクルの取り组みを见てみたい。

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